狂犬病について
狂犬病は、古くから人類に知られている人獣共通感染症のひとつで、名称から「犬」に限定された病気と思われがちですが、すべての哺乳類が感染します。
狂犬病は狂犬病ウイルスによって起こり、ウイルスを保有する動物に咬まれることで感染し通常30日前後の潜伏期間を経て発症します。(咬まれた部位等により潜伏期間は変動し、大脳に近い部位ほど発症までの期間が短いといわれています)
発症の初期は発熱など風邪に似た症状を示し、急性期には興奮、錯乱、麻痺、けいれんのほか、狂犬病の特徴的な症状である恐水症状をあらわします。その後昏睡期に至り、呼吸障害により死亡します。
発症後、症状は加速的に悪化し、数日以内にほぼ100パーセント死亡する大変おそろしい病気であり、発症してからでは有効な治療方法がありません。
世界では狂犬病による死者が年間約4万人から7万人おり、現在も数多くの国々で恐れられています。
過去、わが国においてもいく度となく流行を繰り返していましたが、昭和25年に制定された『狂犬病予防法』に基づき、犬の登録、予防注射の徹底等の措置が取られた結果、昭和32年以降日本では発生していません。これはわが国が島国であるという地理的好条件と、強力な予防事業を推進したことにより実現されたものであり、イギリス、オーストラリア、ニュージーランドほか、日本は数少ない狂犬病清浄国(地区)の一つとなっています。
しかし、関係者の間では日本での狂犬病流行の再来が危惧されています。その原因の一つが、狂犬病予防注射率の低下です。
狂犬病ウイルス保有動物が国内に侵入し汚染が始まった場合、国内の予防注射率が70パーセントを超えていれば、そのまん延は最小限に食い止めることができると言われています。
平成21年度厚生労働省統計「狂犬病予防法に基づく犬の登録頭数と予防注射頭数等について」によれば、全国の注射率は74.3パーセントとなっており、一見安全が守られているように見えますが、この数値はあくまでも登録を行っている犬の頭数を元にした数値で、未登録犬を含めると実際は50パーセント程度といわれており、万が一狂犬病が国内に侵入し、そのまん延が始まれば、非常に危険な状態にあるといっても過言ではありません。
わが国では、狂犬病予防法に基づき、犬やその他の動物に検疫を義務付け、水際で検疫を実施し、狂犬病の侵入防止の徹底を図っています。さらに万一侵入してきたときのために、この病気を予防するため最も人間に身近でかかわりの深い動物である犬に対する登録制度を実施し、感染した動物に咬まれても安全なように予防接種を義務付けているのです。(実施しなかった飼い主には罰則が適用されます。)
再びわが国が狂犬病の脅威にさらされないよう、犬の飼い主としての自覚を持ち、犬の登録、狂犬病予防注射の定期的接種をしましょう。
別表1 狂犬病予防注射率
狂犬病予防注射率(パーセント) | 年度 | |
---|---|---|
全国 | 71.3 |
平成30年度 |
青森県 | 87.3 | 平成30年度 |
黒石市 | 94.8 | 平成30年度 |
96.7 |
平成29年度 |
|
94.2 |
平成28年度 |
|
92.4 |
平成27年度 |
|
91.6 |
平成26年度 |
|
91.0 |
平成25年度 | |
91.9 |
平成24年度 | |
94.6 |
平成23年度 | |
93.9 |
平成22年度 |
狂犬病予防注射実施のお願い
飼い犬へ年1回の狂犬病予防注射の実施は、狂犬病予防法により犬の飼い主に定められている義務であり、違反した場合は20万円以下の罰金に処せられます。(犬の登録申請をしていない場合も同様に罰せられます。)犬の飼い主の方は、愛犬に狂犬病予防注射を年1回必ず実施してください。
人獣共通感染症とは
人間にもペットにも共通して感染し害を及ぼすおそれのある病気です。感染経路は様々ですが、感染動物のフンに触れることで感染するものなどがあります。必要以上に恐れたり、警戒する必要はありませんが、犬を飼ううえで知っておくことで、愛犬や家族を病気から守ることができるかと思います。
病名 | 感染経路 | 症状 |
---|---|---|
狂犬病 | 感染動物に咬まれる | 頭痛、けいれん、死亡 |
レプトスピラ | 感染した犬の尿などに触れる | 嘔吐、下痢、腎炎、肝炎 |
フィラリア | 感染動物の血を吸った蚊に刺される | せき、発熱、胸痛 |
犬条虫症 | 感染動物の血を吸ったノミなどが口に入る | 腹痛、下痢(幼児の場合) |
犬・猫回虫症 | 砂場などで感染動物がしたフンに触れる | 眼痛、頭痛、失明、発熱、肺炎、じんましん |
- いずれも予防接種等で防ぐことができますが、狂犬病予防注射以外は任意のものです。また、予防接種費用に対する補助等は行っておりません。